未来にキスを
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概要

メーカー otherwise
発売日 2001/9/21
原画 みさくらなんこつ
シナリオ 元長柾木、シュート彦、大瀧大輔
CAST
南菜実(飛鳥井霞役)、涼森ちさと(柚木式子役)、佐々木あかり(守里椎奈役)、
田中美智(神澤悠歌役)、佐伯ゆりこ(守里彩子役)、櫻レオナ(飛鳥井慧子役)

 

キャラ別感想

□飛鳥井霞
GENESIS編での話のわかりやすさを強調するために、わざと真っ白な馬鹿として存在 させられいたのかなぁ。自分と主人公との関係だけを見て、周囲の状況をまるで顧みない のがかなり気に障りました。どうして主人公に完全に支配されるものとしていたいのか、 わかった後は従属される側の割にわがままだったのはまだ許せたのですが、好きだから 自分のモノにしたいと考え出してからはもう嫌いなキャラ。

□柚木式子
結局は一番旧い人間の側だったということかな。一番自然体のラブラブぶりで、別れる ときのあっさり感もあってかなり好き。ポエムな言葉もいつもどういう意味なのか考えて しまうものでした。式子にとってみれば文章遊びな雰囲気でも、私からすると上手いこと を言うなといつも感心しきり。嫌々言いながら主人公の事に従順で好きでたまらない感じ が出ているのがグッド。シチューも一番美味しかったな〜。本当に体だけを求めている 感じがして。

□守里椎奈
霞と同様でバカキャラはいいです。霞と違って頭の良さはあるようですが、それを自慢 したり相手を見下したりいちいちこちらのイライラ度数を高めるのが最悪。

□神澤悠歌
キャラとしては一番好きです。天然の中の鋭さあり、わざとらしく茶目っ気を混ぜたり、 可愛らしく振る舞ったりしていますが、そこに嫌悪感はまるで抱きません。それは悠歌 さんというキャラが計算されて動いているわけではないとわかるからです。

 

まとめ

まとめの感想自体はGENESISでの感想でほとんど書いていますので、こちらは簡単に キャラの感想でも。総合的に見ると一番良かったのは式子かな〜。単にキャラの魅力だけ で評価するなら悠歌さんになります。霞と椎奈は論外。霞と式子は色々な意味で対比 される存在でしたね。お兄ちゃんとしか見ない霞が新しい世界の住人なら、式子は あくまで相手の実在を見てその存在を感じる一般的な恋人関係、つまり見えないシステム による法則の上での幸せを享受しようとした旧い世界の人間。好きな理由などなく、単に 「お兄ちゃん」というだけで全てを、言葉どおり全てを相手に委ねられる霞と、心までは、 そこまでは入りこませたくなく自分の存在は存在として確立してその上で相手との関係を 築きたい式子。新しい世界に入りつつある人間であることに気付かない霞、自分が見え ないシステムに支配されている世界の人間だと気付いた式子。シチューにもそれは表れて いて、主人公を喜ばせたいという気持ちは同じなのに、霞は最終的には自分が主体になり、 式子も一見そうなのですが主人公をノせることにより自分もノっていくタイプ。ただ、 椎奈と悠歌は回数自体が少ないので仕方がないとして、霞と式子のように回数が多くても CGが使いまわしだと結構厳しいところはありました。まぁ、シチューは可もなく不可も なくかなぁ。このゲームをやって私が気付いたことは、そのようなキャラクター普通は いないと考えられる良く言われるあからさまな記号的キャラクターよりも、いないことは わかっているのだけどもしかしたらあり得るかもしれないキャラクターの方が好きだな ということでした。

 

2006/6/25 Sun.

 

プレイ感想記

2005/10/15 Sat.

最初の攻略まで進む。いきなり自分はお兄ちゃんのものだと言ってくるのは唐突ですが、 いくらなんでも考えもなしに言うわけはないので、今後わかっていくのかなと。それに しても、霞は自分が言った言葉の意味を本当にわかっているのかな〜。主人公もきちんと 理解はしていないらしく、言葉以上に描写がまだ出てこないのが残念かな。シチューも 単純に描写自体が薄いですし、どうして攻略するのかという背景も薄いのであまりパッと しなかったかな。まぁ、これから霞が段々と覚えていくというのならよいのですが。 シナリオはsense offの人で私も大好きなゲームで、それから考えるに攻略にはあまり期待 しないほうがよさそう。見たいのは世界に対する考え方なので。

 

2006/05/13 Sat.

初めて霞と結ばれてから2日ほど進める。椎奈や悠歌など他の主要キャラも出揃って、 さてこれからが始まりのようです。それにしても霞は自分のことをお兄ちゃんの奴隷だと 言っている割に、言動がそのように感じられずどうにも不満が。自分から首輪を買って きて、お兄ちゃんのものだという印だと街中で付け出すし、椎奈とお兄ちゃんを取り合い しているときに、ボクだけのお兄ちゃんとかほざいているし、シチューも主人公に要望を 出してくれるとはどういうことですか。主人公の方も、別に霞をそういう風に扱おうと しているわけではないので、戸惑いを覚えながらとりあえずは妹のためにノリを合わせて いる感じですが、この全然主従関係というものをわかっていない二人の関係性には大いに ストレスが溜まるのですが。

 

5/14 Sun.

椎奈に西本さんを貸したところまで進める。ヘタレな私は攻略を見ながら途中まで共通 ルートで行けるらしいのでそれで進めています。まずは椎奈からクリアーしていくことに なりそうです。それにしても、本当にこの霞の態度はどうにかなりませんかね〜。学校で 攻略されたいと自分から言ってくるし、攻略中も主人公に要望しか言ってこない。何の なのですかこのキャラは、自分の立場をわきまえてなさすぎですよ。こういうのは本来 なら主人公が言わなければいけないはずです。どうして相手に命令されなければならない のかな〜。いや、単なる恋人同士という関係なら構わないのですが、霞自身が主従の関係 を望んだのにこの扱いは意味不明です。明るくてもポップでもいいですから、せめてこう いうところだけははっきりさせて欲しい。今のところ気に入っているキャラは悠歌さん。

 

5/15 Mon.

特に分岐まで進んでいないのに式子を攻略してしまったようです。必ず通るルートなの かな。霞のときと違い、そこに至る過程が成り行きやその場の流れという言葉を上手く 使っていて、観念的・概念的なその「流れ」を捉えた会話が雰囲気がよく出ていて好きです。 式子が主人公に好意を持っているのは明らかでしょうが、それをごまかすためなのか酒に 酔った勢いでお互い求め合えばそれはそれでいいのでは、という流れをわざと作った ような感じです。初めてのはずなのに、強引に迫るように優しくしないように式子から 言うことからしても。霞の攻略も、主人公が大分慣れてきたのかようやく主導権を 握ってきたようで、霞が予想もしていなかった後ろにいきなりフィットさせるし、また 霞が学校での攻略を誘ってきてもずっと開放させて嫌がらせのようにわざと焦らしたり、 とかなり今までの鬱憤を晴らすような愉快な味を食べれるようになってきました。

 

5/16 Tue.

式子が告白してきたところまで進める。攻略ページを見ると、これを受け入れるか拒絶 するかで霞エンドかそれ以外かが決まるようですな。ここまでの流れとキャラの好感 によってクリアーする順番を決めてみました。椎奈→霞→悠歌→式子、で行きます。 はっきり言って、このわがままという言葉を通り越したバカ女の霞との会話を見ている のはもう我慢出来ません。子供以下です。自分の思い通りになるのが当然だという感じで 喋られるので不愉快極まりない。それに比べて式子は、主人公と酒の勢いで攻略されて 特別な感情を持ってしまい、どうにか理屈で説明しようとしても感情の方が先に溢れて しまい、「ぐちゃぐちゃ」という言葉を何度も使っていましたが、どうしていいのか わからない悩みぶりが告白シーンではよく出ていました。声優さんの演技と相まって、 本当にぐちゃぐちゃしているのだろうなということが感じ取れます。

 

5/21 Sun.

式子の告白を受け入れて椎奈ルートに入る分岐点の選択肢まで進める。式子の駐輪場は 中々に美味しかったです。告白して想いが通じ合った興奮からか、はたまた好きな人の お願いには断りきれないからか、主人公のわがままというか無茶な要求にも嫌々ながらも 受け入れてくれるのが良い。とても良い。それにしても私は椎奈というキャラを誤解して いました。式子との一件の後に小一時間ほど椎奈の一方的な誘いによりデートをするわけ ですが、今までに見せないほどの主人公への気がある様子を見て、この変化ぶりは唐突 すぎるかな〜でもゲームだし多分に漏れず主人公のことが好きなのだろうとぐらいしか 感じていませんでしたが、別れ際に実は主人公の顔が家に持って行ってはいけないもの だったからという理由を聞いたときに衝撃を受けました。そういう表現でもって、 好きな人のために無理矢理でも時間を延ばそうと頑張っていたのかとそれまでの行動を 思い出したからです。この件以来、主人公は気付きませんが、椎奈も自分の気持ちを あまり隠そうとせず、お兄さんと一緒にいる時間こそがとても価値のある時間だとか、 だからお兄さんの存在は大切だとか、霞との関係に何かあったのではないかとか、よく 主人公の表情を察知できるなと会話にその意思が見られるようになったわけですが、 どうも今までそれを隠すためにわざと会話に無駄といいますか長引かせるような言い回し をしていたのではないかと思ってしまいます。式子との会話は式子自身があまり他人に 関心を持たず自分自身の考えにも勝手に納得するので軽く終わりますし、天然の悠歌さん でも悠歌さんの言葉自体が短く思ったことしか言わないのでこれもまたすぐ終わるのに 対し、椎奈や霞との会話は変にループしたり不毛な言い争いや屁理屈合戦になったりで 付き合うだけで疲れものであまりこの二人は好きではないのですが、ここにきて椎奈が 実は考えて会話をしていておバカさんという印象を持たせようとしていたのではないかと 思うようになって、もしかして霞もその類だったりして。悠歌さんも式子も椎奈も、 そして椎奈が霞が主人公にくっついている理由を主人公が難しいことを考えているから、 みたいなことも言っていましたが、ヒロイン全員が主人公のことを何かしらの目で見られ ているのは、主人公は(彼女たちにとってという意味ではなくあの世界にとって) 特別な存在という位置付けなのかしら。

 

5/28 Sun.

椎奈のお母さんとのデート中の回想シーンに入るまで進める。椎奈に霞と式子のことを 話すときはもっとグダグダな展開になるかと思ったのですが案外あっさりしていました。 寧ろ、式子との別れ方が意外でした。でも、あの一瞬の賭けでこのまま付き合うか 付き合わないかを感情を抜きにして実行したのは式子らしい。こういう別れと言いますか、 関係性は結構好きです。霞もお兄ちゃんに好きな人がいることに感づいて、大好きな人の ためにその人が幸せになれるのなら自分がその好きな対象でなくても構わない、迷惑を かけるのもやめるから首輪も自ら外し料理もやるようになり起床も自分一人で行なおうと する姿勢に少し彼女のことを見直しました。

 

5/30 Tue.

椎奈を別世界に連れて行くところまで進める。これだけ椎奈がアプローチをかけている のに、主人公はまったく気付いていないのかと思ったら、実はきちんと気付いていて いつも軽く受け流していたようで。ハワイがどこにあるのかも知らないのに、円周率や ルートといった無理数を何桁も知っていることを常識と言うのは鼻につきます。それと、 質問をしてきたから主人公が答えてあげると、そこはわかっていて私が聞きたいのはこの 部分です、と言ってくるのは前出の数学知識もそうですが偏った知識バカのくせに人を 馬鹿にした態度はかなりむかつきますね。シチューの味は言わずもがなあってないような 如しですが、そこに至るまでの椎奈が自分をこの世界から抜け出してくれる存在としての 主人公に、言葉としては連れて行ってと言っていましたが、その意味がわからないのを 主人公が椎奈と話して整理していくうちに理解していく流れがいい感じでした。特に、 好きだから〜したいという考えではなく、本能が先に来てその結果好きという表現が 出てくるという逆転の発想に驚きました。攻略することが目的なのではなく、目的の ための手段だと。

 

6/3 Sat.

椎奈クリアー。なんとも難しい話です。どうして主人公が自分で立つ人間なのか、 人の上にある「家族」という概念、人ではない意思を持ったものに支配されていない 特別で自由な存在なのか、新しい世界に関わる人物なのか、こういう肝心な部分の理由を 彩子さんも椎奈も語ってくれないのでどうしても会話を聞いていても引っ掛かりが残った ままになってしまいます。人でないものが意思を持ってそれに支配されるのは自動的な 人間(本編ではこれは人間でもないといったような表現が使われていましたが)、人が 人を支配するのはこれとは違い決して悪いことではない、寧ろ椎奈が言うようにそこには 感情が入るので誰にも真に感情を向けない大好きなお兄ちゃんが支配してくれるなら 自分に感情が向いていることにイコールになるから、自分を新しい世界に連れてって くれることになるから、その関係を望むというこの表現は結構わかりやすかったです。 この椎奈の考えを聞いて、霞が主人公に奴隷にしてと言ってきたのはもしかしてこの 関係に近い意味で言っていたのかもと思いました。だとすると、私は霞に対してかなり 思い違いをしていたことになりますが。少しクリアーする順番を変えます。やはり、霞は 最後に回したほうが良さそうですので、次は悠歌さんを狙っていきます。今回の椎奈を 支配するためのシチューは前回の単に手段として行なったものよりも、かなり満足出来る ものでした。言葉の使い方が上手かったというのもありますが、後ろを執拗にいじった のが良い。しかも、簡単に慣れてしまうという拍子抜けさせるようなことはせずに、 きつく痛くそして止めは指が抜けないというこの絶妙なスパイス。椎奈の苦痛の表情と 共に主人公が椎奈を支配した瞬間というのを感じられました。

 

6/10 Sat.

悠歌さんクリアー。やはりこの人の性格は好きだな〜。ボケているのかボケていないのか 微妙なところが。入部に誘うのも、夜の見回りに付き合ってもらうのも、会えば何かと 主人公に反応してくれるのも、主人公のことが好きだったからで。鈍いと言った直後に さらっと告白してくるのは卑怯ですな。このタイミングで来るか〜、と思ってしまい ました。主人公もその求めに応じたらいきなりフェラーリに突入したのは不意打ち でしたが。あの流れからすると普通は口づけでしょう。悠歌さんが悲しい気持ちになって いるのを主人公が何度も問いますが、悠歌さんがどうも話してくれないのが堂堂巡りの 議論になっていて主人公と同様あまりいい感じはしませんでしたね。理由がわかっても 悠歌さんの悲しみはやはり理解は出来ませんが(そもそもいっている事自体はわかるの ですがその意味を考えると私の頭では追いつきません)、主人公が一つの答えを提示して それにより悠歌さんの不安を解消できた過程には鳥肌が立ちました。結局は世界の捉え方 次第ということでしょうか。悠歌さんは人の心を知る、そこまで行かなくても一緒にいる ことで何となく理解出来てしまう、巫女という少し強い力を持つ人間でなく普通の人間 でもそういうことが出来てしまう、それではもう絶対の他者ではなく自分にとって未知の 存在ではなくなってしまう、それが一番好きな人だから「特別」な好きな位置にしたいのに 結局好きな延長線上の程度が大きいところに置くことになるだけで、どきどきがなく なってしまうことが悲しいと思うわけで。好きなのにその人にときめかなくなる。それが 来ることがわかってしまうから主人公に判らないほうがいいと言っていたのかな〜。正直、 悠歌さんがこの辺りの話をしているときはさっぱりわからず釈然としなかったのですが (どちらかというと主人公のいっていることのほうがわかりやすかった。人の気持ちなんて 完全には理解できないと悠歌さん自身が言っているのにそれを前提とした話し振りだった ので。悠歌さん少しへ理屈)、主人公が答えを悠歌さんに与えたときのシーンがその演出も あって忘れることが出来ません。目を閉じる、比喩表現としてだけど目を閉じる行為 全てに、世界を閉じる意味を持たせ自分だけの世界に在ることを感じさせる、だからこそ その中では好きな相手は常に未知の存在として接する。表情を見てしまうから、言動を 見てしまうから、世界を見てしまうから、だからそこから人は相手の考えていることを 感じてしまうわけで、本当に心の中が読めるというオチではないのがミソなのかな。 回想の中で自分のけがの痛みを友達が分かち合ってしまったのを自分の物語に入ってきた と表現していたのが面白いな〜。

式子も部室での賭けに乗ってあげて、2回目の自室の部屋でのシチューまで進む。 何だかんだ言いながら、恥じらいながらも主人公におねだりをし、終いにはどうせ〜よ、 と逆ギレ気味に涙で訴えかけてくるのがよい。

 

6/11 Sun.

式子を着々と進行中。部室で行なうのが定番となってきました。主人公のお願いに初めは 必ず嫌がるのに、それは言葉だけですぐに認めざるを得ないほどの感じになっていく様は 演技だとしてもよろしいものです。悠歌さんの時に書くのを忘れていたのですが、声の 威力というのは本当に馬鹿に出来ません。賭けですぐに切れてしまう関係が続いている わけで、式子も主人公も表現していましたが混乱の中ただ慣れていくという状況で、ただ 体を重ねていくことで付き合っていると認識しているのがウソくさくて結構好きです。

 

6/19 Mon.

式子クリアー。部室の鍵をかけずに行なったことで主人公に変態呼ばわりされて、初めは 嫌がって照れいたのに開き直って刺激を求めていると言ってきた式子に乾杯。しかし、 このENDもまた難しい話を持ってきます。式子がこれ以上自分が変わるのはダメ、自分 らしくあるためには恋人関係ではいられない、それを主人公が式子らしい式子が好き だからという理由から許す、この構図は理解できます。式子が感じたこのまま幸せを享受 したままの深い穴、相手を失うことへの不安ではなくて自分を失ってしまうことへの不安 というのは、悠歌さんが感じていたドキドキがない世界と意味通ずるのかなぁ。また、 あの夜の出来事から二人の物語が始まって、未来への選択肢を選び取った世界に混乱した ままの定常状態でいることは自分への変化が大きすぎる云々と言っていましたが、これが 椎奈ルートでいうところの主人公が連れて行ける世界のことなのでしょうか。その世界を 誰かを好きになる法則で支配されている世界と表現していたのが面白いです。前日に 式子がこの関係を終わらせようといった理由を喫茶店で語るときのあの頬づえついて 上目使いでこちらを見る表情が忘れられません。初めの出来事が主人公に対して多少なり とも好意を持って行なったものではなく、まったく本当に偶然だったというのは驚き。 その時は酔った勢いで主人公に強引になるよう迫っていたのかと思ったら、痛みに 対しては滅茶苦茶我慢していたようで、そこからの経過と心情を順に追って説明して くれてこれも意外の連続でした。初めての相手だという客観的な事実が主人公を特別な 彼としての存在にならしめたことへの混乱。最終的な結論として、式子はそれは単に 主人公のことが好きなのだということに気付くわけですが、その単純な事実に気付くまで の混乱が何故起こるのか理屈を考えていたのが式子らしい。あの自転車置き場での告白も、 部室に鍵をかけないスリリングな行為をするのも、式子の混乱からくる心情に基づくもの なのだと理解できるものでした。ストーリーも後半になって式子の方から不意打ちの如く ようやく主人公への気持ちが気付いたからといって、好きだと伝えてくる様子が可愛らし かったり、エピローグ前のシーンでご休憩所での一服後の沈黙の中で主人公が同様に 自分の気持ちを伝えた時の式子の反応がまたよいのです。関係から始まった恋愛描写と いうのも美少女ゲームの展開として私は結構好きな部類ですので。それなのに、 いやだからこそなのでしょうが、好きなのに幸せなのにわたしと彼という関係維持のため にこの時間をやめるというのは難儀なものです。他に表現として印象に残ったものを 挙げると、恋人と何かをするということは言葉や行動・動作を解読する詩の交換であること、 考えることは後ろ向きなので未来のことを考えるのは矛盾、互いの存在・事象が相手の 出来事とはまた別に影響力を及ぼすなど。

続けて霞をクリアー。彼女の感想はどちらかというと次のGENESIS編の方に比重が傾き そうなのでこちらでは軽めに。まずはシチューの方から。4人中一番回数が多いわけですが、 一つ一つの時間が長いわけではないし、テキストは違えどCGも使いまわしが多いので、 満足出来たのは数えるほどです。シャワールームでの戯れと学校の食堂で主人公から言葉 責めをもらいながら快感の波に溺れるところでしょうか。シーンとしては、最後の一日で お互いの気持ちを確かめ合いながら抱き合うところが印象的かな。霞シナリオをやって いて気付いたことは、関係性を他の誰かにばれてしまったこと。霞以外のシナリオを やっていたときの違和感がこれでようやく解けました。あれだけべったりの霞がいるのに、 どうして他の女の子のストーリーでは関係が(直接的に誰と付き合っているのか)ばれない のだろうと不思議に思っていたのです。GENESIS編でははっきりしますが。各主要 ヒロインにばれるわけですが、その反応がそれぞれキャラの特色に合ったものでした。 悠歌さんは天然のボケまくりで二人の反応をまったく無視しているところ。椎奈は これを口実に恐喝をしてきますが、そこは椎奈、墓穴を掘って自爆しますし、でも、 椎奈ルートでは主人公からその話を聞いても冷静に答えてくれたのを覚えていたので、 主人公が霞との関係を隠さないで認めたのを聞いて納得してくれたのは良かったな〜。 そして、式子の反応がやはり一番興味深いです。自分という選択肢を選んでくれなかった、 その理由がはっきりしてしまったわけですから。しかもそれが自分の大事な友達の霞 だからまた複雑。霞を傷つけているのではという主人公への怒りと、自分は選ばれ なかったのだという主人公への怒りが同時に出ていて。そして、霞との関係性の異常 にまで気付いて、自分が霞には絶対敵わないと悟ってしまった時の表情を見ると、本当に 主人公のことが好きだったのだとわかります。霞が主人公に言ってきた、奴隷にして、 という言葉を聞いただけで理解したのが凄いですが。ここで霞の気持ちを代わりに説明 してくれたのが助かりました。と同時に、式子が主人公と付き合っていたときとの違いが わかって面白いです。式子自身が言っていたように、結局式子は自分の存在を保ちながら 彼という関係性を進展させて幸せになろうとしたのに対し、霞は自分という存在を放棄 してお兄ちゃんである主人公に支配される(よく言われる身も心もというやつ)ことで、 主人公の意思が自分を変えていってくれるという影響に期待し、実際にそうなることが 幸せだと感じるわけで。霞がゲーム冒頭で言ってきたときにはこの娘は意味がわかって 言っているのかと思いましたが、霞自身もこの答えを見つけたのは最後の一日のベランダ で告白してくれたことで。つまり、後ろくらい意味で使っていたわけではなく、ただ 純粋にお兄ちゃんへの愛(とこの場合呼んでよいのかわかりませんが)もしくは好きだと 想う気持ち、ずっとひっついていたいという気持ちから出てきた言葉なわけで。霞が この告白をしてくれた場面は真面目で結構好きのですが、後々GENESIS編でこの気持ちに 関して霞の気持ちに変化が出てしまったのがあまり嬉しくないのです。これはまぁ後述。 霞が無条件で、それこそ理屈を考えてはいけないほど、主人公のことが好きなのはわかり ますし、2週間で段々と変化させられてきたことによりますます好きになったというのは よいのですが、主人公がどうして霞を好きになったのか受け入れたのかという説明が なかったので、どうもその後の主人公が霞を支配する決意を固めたのかが釈然としません。 他のキャラでもそうなのですが、優柔不断というより流されやすすぎです、この主人公。

 

6/24 Sat.

最後はGENESISの感想。これは何といいますか、つまり美少女ゲームをやっている 私(たち)は、既に進化した人間で圧倒的な楽園での幸せを手に入れていると捉えていいの でしょうか。非存在である存在のキャラを自分の心の中で永遠として好きでいられると いう意味で。それでしたら、私は中学のときから気付いました。ただ、それを概念として 意味のある言葉で説明しているのがこのシナリオの凄いところだと思います。コロンブス の卵の発想でしょうか。はっきり言って、考察サイトを周った方が整理はつきそうですが、 つらつらと思うがままに書いていきます。

霞編の後日談として展開されていて、本編では見られなかった、というよりなかったのが 不思議だった式子との三角関係から始まる。わざと霞が見ている前でキスをして勝負を かけたのに、霞が正妻ぶりを発揮して式子が敗北するという構図が式子好きな私としては いい感じではなかったです。その後の主人公の部屋での式子のリレーション・コントロール の話は面白いものですが、純粋な気持ちしかなくお兄ちゃんしか見えていない馬鹿な霞に はまったく通用しないわけで。これは、相手が理屈が通るキャラでしたら話は違っていた でしょうに。それでも式子のこれは悪あがきでした。ただ、このGENESISの話の前提と なっていた、霞が主人公をモノにしたいという感情が出てきたのがこの式子との関係の ときで、いつの間にか主人公と霞の(行為の矛先としての)主従関係が逆転していたのが 違和感。特に、自分はすべてを主人公に支配されて幸せになったはずなのに、式子が 取りにかかってきた途端、主人公のことを自分の所有物のように扱い出した霞がとても 嫌です。霞は何か勘違いしているようですが、霞は主人公の支配下にあり、主人公は 霞からの影響は無視しうる関係のはずです。基本的に私はこういう、相手は必ず私だけを 好きである、または私を好きでないはずがない、と勝手に考えているキャラは大嫌いな 部類です。ですので、急に霞が今までとは逆で自分の主人公に対する支配云々の話を 持ち出したときは正直興ざめしましたが、この感情の方向がこのGENESISの出発点に あるから仕方ないです。

どうして霞視点でやったのかがいまいちわからないのですが(主人公視点でもよかったと 思います)、後々わかることで多分主人公=プレイヤーという図式で、既に本編中で主人公は 新しい世界の住人だということを言われていたので、それを気付かせるためにわざと一番 考えがない何もわかっていない霞を使って徐々にその世界へ近づく過程を見せたかった のかなと思っています。他の3人はそのための、ヘルプツールような存在で。順番として は式子→椎奈→悠歌さんと話が聞けるわけですが、式子の見えないシステムに支配されて いる世界での話、椎奈の最早人間とは呼べないその世界とは違う新しい世界がある という話、そして悠歌さんのその世界へと行けるヒントのような話。全部、彼女達の本編 で語られ触れられてきたテーマなのですよね〜。実は私は世界と恋愛との関わりの観点 からとして、霞→椎奈→式子→悠歌の順番だと思っていました。霞が一番真っ白でただ 純粋に好きという状態、椎奈が人を好きになって付き合うまでの状態で今とは違う世界に 行けるということ、式子が付き合ってからの違う世界に行った状態、悠歌が付き合って 行き着く先の悲しみの状態、といった風にです。でも、GENESISを見て改めると、 式子→椎奈→悠歌→霞、の順番になるのかなと。多分、式子が一番(ゲーム中の意味での) 人間ではないところに存在していたわけで。そういえば、誰かを好きになる法則に支配 された世界での心地よい幸せを享受していると自分でも言っていましたね。式子本編を やっているときは椎奈の話を忘れていましたよ。式子がどうしても主人公との関係を 持とうと霞に策を出すわけですが、それは好きだからであり、だからこそ椎奈に言わせる とこの世界には好きという感情はない(はず)と、あるのは好きという言葉に支配されている 単なるヒトという存在であって人間ではないということかな。式子がその話を聞いてから、 後日学校がそのシステムでの究極に位置するのではと察したのは流石でしたが。

そして慧子が来た辺りから霞視点からの話になり、いつの間にか関係が逆転していた、 霞が主人公をずっと一緒にいたい・自分のモノにしていたいという感情が出発点で、その 想いが強くても絶対に完全に支配することや理解することが出来ないのだから、それは 離れることを意味するので、そのときの悲しみに耐えられるように今から離れる練習を するという。これは式子シナリオでも式子が後々くる大きな悲しみを回避するために、 今の恋人関係を解消することで小さな悲しみに止めたことと多分同じ考えだと思います。 そしてその悲しみというのが、悠歌シナリオでも語られていたドキドキのない世界であり、 理解し合おうとすればするほど人という存在が意味を成さない、好きな対象がいなくなる 寂しい世界になってしまうことだと。この解決策として(多分これが圧倒的な楽園が 待っている世界へ行くヒント)、悠歌シナリオでは主人公が教えてくれたことで、この GENESISでは悠歌さん自身が語ってくれますが、自分の心の中にいる相手だけを見る ということ。霞はこれを聞いた時、それは本当のお兄ちゃんではないと言っていて、 確かにそれでは妄想の人物を支配することにもなりますが、悠歌さんが言うには現実の 人間は支配できない壁があるからこそ相手の存在があり、なければ一つになってしまう だけで(何だか人類補完計画みたいな話だ)、だからこそ内から支配することで外にいる 人間も好きな対象と存在させることが出来るということでしょうか。そして、最後に 出てくる慧子の言葉。正直、この子の存在が一番謎で、今までの3人のキャラの話を まとめて語ってくれますが一体何者なのでしょう。まぁ、単なる語り部の存在として 登場しているのかもしれませんが。本当の相手を好きになると、霞や悠歌さんが気付いた 理解し合って寂しい世界になる、もしくは完全支配が出来なくなり離れなくてはならない、 そういった悲しみが生まれる。でも、心の中の相手なら永遠に支配できる。慧子が言って」いる、 自分の中の「お兄ちゃん」という概念を見てただそれを相手の枠にはめた、 というのは今世間一般で言われている「萌え」や「属性」を言っているのだろうな〜。

式子がすぐその後に「属性」については語ってくれて、世界を自分の持つ好みで読み替えて しまうみたいなことを言っていて、この考えを言葉にしてしまった・世界に対しての働き かけといいますか認識論の考えは非情に好きです。世界は事実的に一つなのではなく、 自分の捉え方でなんにでも変化させることが出来るという。Sense Offでも似たような 主旨があって、私はこれでウテナの世界を革命する力を解釈することが出来ました。 話が少しずれましたが、私自身はこの式子の言うところの「非存在への愛を存在へと注ぐ」 というやり方は実はタブーだと思って、意図的にそういう衝動にかられても出ないよう にしています。ここからは内を二次元、外を三次元と捉えます。永遠である二次元に 対する想いを三次元にフィードバックするのは、結局その瞬間に具体性を持たせてしまい 永遠性が崩壊するからだと思うのですよ。勝手に相手をその対象として見てしまえば 簡単に幸せを手に入れられます。ですが、それでは結局二次元とのズレを感じ、相手を 完全に支配できないと打ちひしがれるだけです。端的に言えば、二次元は存在しないの です。だからこそ、永遠に存在することになるのですが(ただし、前提として自分という 存在が確立していることが前提。これは主人公や霞も言っていたことかな)。まぁ、これは 単なる私の経験則なので。

最後に霞と主人公の会話で、自分達自身がもう絵に描いた二次元みたいなものだと、存在 していて存在していないのと同じだとキャラに喋らせています。非常にメタ的なことで、 ここまで来ると彼女達が今までのことを述べてきただけなので、やはりこちら側に私たち とすれば外にフィードバックせずに自分の心の中だけを見ていれば圧倒的な楽園が待って いる希望のある幸せを手に入れられるということでしょうか。つまり、美少女ゲーム、 ひいては漫画・ゲーム・アニメ・ラノベなどのいわゆるキャラクターを好きでいることを 全肯定しているということか。ただそれだけなのかもしれないけど。エヴァ風に言うと、 僕は二次元を好きでいてもいいんだ、といったところでしょうか。相手を見ずとも(相手が いなくても)、自分だけで幸せになれる究極の方法ですな。そんなものはとっくに手に 入れていますがね。概念として再認識させてくれたことに感謝。あ、もしかして世界への フィードバックとは、私たち側のことを言っているのではなくて、自分の持つ属性を相手 「キャラ」に当てはめて好きになるということか。それなら私にとってもまったく問題ない わけですが。どちらにしても、誰かを好きになるという考えに支配されるのではなく、 自分のルールでもって相手を(心の中で)支配することがシステムの外にいる条件と捉えて よいのかな。

 

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